Smiley face

 「人生の途上で思いがけない災厄に遭った人はいかにして立ち直るのか」

 その問いへの答えを探して、がんを専門とする医師、垣添忠生(ただお)さん(84)が歩き、東日本大震災の被災者やがん患者らと対話したドキュメンタリー映画が完成した。8月に公開が始まる。

 日本対がん協会長で2度のがんを経験、最愛の妻をがんで亡くした遺族でもある垣添さんは2023年3月末、青森県八戸市をスタート。「がんサバイバーを支援しよう 3.11を忘れない」と書いたのぼりを手に、福島県相馬市まで約1千キロの「みちのく潮風トレイル」を南に進んだ。

 シナリオはない。偶然出会った人も登場する。

 青森県階上町で遭遇した女性は、乳がんになり15年の治療経過を話し、「(抗がん剤の副作用で)はげても命あれば」と笑顔をみせる。

 大震災で亡くなった人らの供養を続ける岩手県大槌町の寺の住職は、「紙一重で生かされている命。悲しみをこれ以上増やさないよう、生きていく誓いを立てた」と語る。

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岩手県大槌町の寺の住職、高橋英悟さん(左)と垣添忠生さん=映画製作委員会提供

 宮城県気仙沼市で酒店を営む女性は、夫と両親を失った。そのときの様子を語り、「深いどうしようもない悲しみがあった。色んな方々に支えてもらい、ありがたい」。

 児童や教諭らが津波で亡くなった石巻市の大川小学校で語り部をする女性は、自身の息子も津波で失った。「話すことがリハビリ。寄り添ってくれる方が心の支えになっている」。

 垣添さんはうなずきながら聴き、短く返す。「どうかお元気で」「活動を続けてください」

1千時間を超える映像 「希望があれば」

 2人のカメラマンが交代で撮…

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